石川県金沢市の代表的な郷土料理である「治部煮(じぶに)」には、「すだれ麩」というちょっと変わった具材が使われています。本記事では、治部煮に使用する具材と、すだれ麩がない時に代用できる食材について紹介します。
治部煮の具材
治部煮(じぶに)は、石川県金沢市に古くから伝わる郷土料理(加賀料理)で、江戸時代以前から食べられていたとされています。
治部煮は、鴨肉やすだれ麩、季節の野菜やキノコなどの具材を、醤油、砂糖、みりん、さけで味付けしただし汁で煮込みます。
治部煮の最大の特徴は、鴨肉をそぎ切りにしてから小麦粉をつけるという点です。鴨肉の表面に小麦粉をつけることで、肉の旨味を閉じ込めて、汁にとろみをつけるのが特徴です。
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もともと治部煮は、武家料理として始まったと言われており、加賀藩主の別邸である、金谷御殿が完成した際の宴では、次のような具材が入った治部煮が提供されました。
加賀藩主の別邸、金谷御殿が落成したお披露目の宴に藩士約3000名が招かれた際、その宴では藩公に鴨肉・せり・すだれ麩・くわいの「じぶ煮」が供されたという。(引用元:農林水産省WEBサイト じぶ煮 石川県)
すだれ麩とは、小麦粉、小麦グルテン、米粉などを原料とした生地を「すだれ」で包んで茹でた麩のことです。くわいとは、オモダカ科の水生植物で、地下茎の一部が膨れた塊茎(かいけい)を食べます。
治部煮は、武家から始まり庶民に至るまで広く親しまれてきた郷土料理です。鴨肉は貴重であったため、江戸時代の庶民は、ツグミ(スズメの仲間の小鳥)などの野鳥をつくねにして治部煮の具材にしたとされています。
現在は、鴨肉を鶏肉で代用することが多く、その他の具材は、ニンジン、ネギ、小松菜、ほうれん草、シイタケ、タケノコなどがよく使われます。薬味にワサビを添えて食べるのが一般的です。
すだれ麩の代用は?
石川県金沢市に伝わる治部煮にとって、すだれ麩は欠かせない具材なのですが、一般的には手に入りにくい食材です。そのため、すだれ麩が入手できない時は、通常の生麩(粟麩)で代用すると良いでしょう。
すだれ麩と通常の生麩(粟麩)の違いは、原料とすだれで包む製法の違いです。すだれ麩は、小麦粉、小麦グルテン、米粉を原料とした生地を「すだれ」で包んで茹で上げます。製造元によっては、粟麩を「すだれ」で巻いたものもあります。
一方、通常の生麩(粟麩)は、小麦グルテン、もち粉、もち粟を原料した生地を茹でて作るという違いです。そもそも、麩自体にはあまり味がないので、通常の生麩(粟麩)で代用できます。
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すだれ麩と通常の生麩(粟麩)は、強火で加熱すると膨れてくるので弱火で煮込むようにしましょう。治部煮は、肉にまぶした小麦粉が汁に溶け込んで、とろみがでるため、強火で煮込むと吹きこぼれる原因になるので注意が必要です。
本来、治部煮は、だし汁の旨味を吸収したモチモチ食感のすだれ麩が美味しいのですが、すだれ麩や生麩(粟麩)が、どうしても手に入らない場合は、スーパーなどで手軽に買えるドーナツ状の焼き麩(車麩)で代用しても構いません。
すだれ麩
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