くさやは、新島や八丈島、大島などの伊豆諸島に伝わる郷土料理で、強烈な臭いを放つ食べ物として知られています。それでは、くさやの匂いを例えるとどんな臭いで、どんな味の食べ物なのでしょうか。まずは、そもそもくさやはなぜ臭いのかについて解説していきます。
くさやはなぜ臭いのか?
通常の魚の干物は、開いて内臓を取り除いた魚を塩水に浸してから天日干しにしますが、くさやの作り方は開いた魚を「くさや汁」と呼ばれる強烈な臭いのする茶色の液体に、10~20時間ほど漬けてから天日干しします。くさやがなぜ臭いのかは、このくやさ汁を使うことが理由です。
くさや汁は100年以上にわたって継ぎ足しながら同じ液を繰り返し使います。くさや汁を用いる製法が生まれた理由については諸説ありますが、伊豆諸島は江戸時代初期には塩の年貢が厳しく、塩が貴重品であったため、仕方なく同じ塩水を繰り返し使って魚の干物を作っていたことで、独特な臭いのあるくさや汁ができたとされています。
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それでは、塩の年貢が無くなった現在でも、なぜ臭いくさや汁を使用しているのでしょうか。その理由の1つとして考えられるのは、海水に漬けて作った通常の塩干魚よりも、くさや汁に漬けて作った魚の干物の方が倍近く日持ちするということです。
同じ塩水を繰り返し使っているうちに魚の成分が溶け出して、塩水が微生物の作用を受けます。こうしてできたくさや汁の中には、抗菌物質を産生するコリネバクテリウム(Corynebacterium)が存在し、それに漬けて作ることでくさやは腐敗しにくくなるのです。つまり、くさや汁には天然の抗生物質が含まれているわけです。
発酵と腐敗の違いについては、こちらの記事をご覧ください。
くさやの匂いを例えるとどんな臭い?
くさやの匂いは、くさや汁の中の微生物が作り出したものです。使用するくさや汁は加工場によって異なり、管理が悪いものは、強烈な刺激臭を放ち、くさやの匂いはどぶの臭いに例えられることが多いです。しかし、衛生管理が行き届いた環境で生活する現代人にとっては、どぶの臭いを嗅いだ経験がない方もいらっしゃると思うので、くさやの臭い成分を元にどんな臭いなのかをもう少し詳しく解説していきます。
くさや汁の臭気成分は、アンモニアのほか、酪酸、バレリアン酸などの有機酸や、揮発性イオウ化合物が重要である。(引用元:藤井健夫著 発酵と腐敗を分けるもの ーくさや、塩辛、ふなずしについてー)
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くさやに含まれるアンモニアは鼻にツンとくる刺激臭で、例えるなら掃除していないトイレの臭いです。酪酸(らくさん)は腸内細菌が産生する物質でもあるので、どんな臭いなのか例えるとオナラの臭いです。バレリアン酸は、例えるなら汗臭く感じる強い酸臭です。揮発性イオウ化合物は種類によって様々な臭いを放ちますが、分かりやすい例えで言えば、卵の腐ったような臭いです。くさやの匂いは、これらの臭いが混ざり合った強烈な臭いということになります。
臭い成分の成分量をアラバスター単位(Au)で数値化すると、焼き立てのくさやの匂いは1,267Auです。納豆の匂いが452Auなので、くさやの匂いは納豆の2.8倍です。
臭い食べ物ランキングについてはこちらの記事をご覧ください。
くさやはどんな味?
くさやで用いられるくさや汁は、基本的には塩水なので、くさやはどんな味かと言うと、塩辛い味です。
くさやは、伊豆諸島周辺でとれたムロアジやトビウオなどを原料に作られており、ムロアジのくさやは脂があってジューシーな味わいですが、トビウオのくさやは比較的あっさりとした味わいです。
焼いたくさやを口に含むと、独特なくさやの匂いが鼻に入ってくるので、この臭いが苦手という方にとっては敬遠されがちですが、肉厚の魚の身は歯ごたえがあり、くさやには発酵食品特有の旨味があります。くさやを食べたことがなく、どんな味か気になる方は、一度味わってみてはいかがでしょうか。
新島産くさや
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