栃木県那須塩原市の塩原温泉郷には、スープ入り焼きそばの名店が2店舗あり、それぞれが異なる発祥のルーツを主張しています。本記事では、スープ入り焼きそばの発祥や、なぜスープ入りにしたのかという理由について紹介します。
那須塩原「スープ入り焼きそば」は発祥のルーツが2つある?
塩原温泉郷には、塩釜温泉付近にある釜彦食堂の「スープ入焼きそば」と、古町温泉付近にあるこばや食堂の「スープ入り焼きそば」の2つの名店が存在し、それぞれが異なる発祥のルーツを主張しています。
釜彦食堂の「スープ入焼きそば」
塩釜温泉付近の「釜彦食堂」では、料理名を「スープ入り焼きそば」ではなく「スープ入焼きそば」と表記し、元祖スープ入焼きそばの店として主張しています。
釜彦食堂のスープ入焼きそばが考案されたのは今から50年ほど前のことです。焼きそばとスープを出前した際に、すぐにスープがこぼれてしまうので、焼きそばとスープを一緒にすればこぼれにくいという発想からスープ入焼きそばが生まれました。
サランラップがダウケミカル社から発売されたのが1952年(昭和27年)のことで、それ以前は料理にラップをかけるという文化がありませんでした。現代人の考えでは、スープを出前すればこぼれるの当たり前だろと思うかもしれませんが、昔はそんな無理も押し通す世の中だったので、ラーメンもスープを多少はこぼしながら普通に出前してました。
釜彦食堂が初めてスープ入焼きそばを提供したのは、1955年頃(昭和30年頃)で、開発期間に3年ほどかけて、焼きそばのソースが醤油味のスープに溶け込む、独自の料理を完成させました。
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こばや食堂の「スープ入り焼きそば」
古町温泉付近の「こばや食堂」で提供されている「スープ入り焼きそば」は、次のような発祥のルーツを主張しています。
昔々、塩原で最初にラーメンの麺で焼きそばを焼いた「新生食堂」という店がありました。この焼きそばは美味しいと評判でしたが、実は食べたいというお客さんだけにに出す裏メニューがあったのです。それがこのスープ入り焼きそばでした。(引用元:こばや食堂 スープ入り焼きそばのルーツ)
こばや食堂のスープ入り焼きそばは、かつて存在した新生食堂の店主から、直接教わったものだと主張しています。つまり、元祖スープ入り焼きそばは新生食堂であって、こばや食堂はそのレシピを受け継いだものというわけです。
新生食堂から作り方を受け継いだこばや食堂の店主は、その後こばや食堂のスープに合う、独自のスープ入り焼きそばへと進化させています。
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那須塩原名物「スープ入り焼きそば」はなぜスープ入り?
釜彦食堂の「スープ入焼きそば」とこばや食堂の「スープ入り焼きそば」は発祥のルーツが異なるため、それぞれの味付けや具材に違いがあります。
釜彦食堂の「スープ入焼きそば」のスープは醤油味で、具材はキャベツと、かまぼこ、鶏肉を使用し、麺はいわゆる焼きそばで使用する中華麺です。焼きそばのソースと香辛料が効いたパンチのある味付けになっています。
こばや食堂「スープ入り焼きそば」のスープは醤油味で、具材はキャベツと豚肉を使用します。麺は焼きそばの中華麺で、全体的にウスターソースの香りと甘味を感じる味付けになっています。
釜彦食堂の「スープ入焼きそば」がなぜスープ入りなのかという理由は、スープと焼きそばを別々に出前するよりも、スープ入りにした方がこぼれにくいという発想から生まれたものだからです。
一方、こばや食堂の「スープ入り焼きそば」がなぜスープ入りなのかは、作り方を教わった新生食堂の裏メニューで、もともとスープ入り焼きそばを提供していたからです。
スープ入り焼きそばの名店がある那須塩原市は栃木県の最北部に位置し、冬季は雪が積もるほど寒くなる地域です。これは著者の個人的な意見ですが、単に寒かったから焼きそばと一緒に温かいスープを注文したくなり、焼きそばをスープに入れるという発想に至ったのではないかと推測します。
寒い時でもラーメンではなく焼きそばが食べたいと思うことってありますよね。でも、冬に焼きそばを食べるとすぐに冷めてしまう。そんな時、スープ入り焼きそばがあって良かったと感じるものです。スープ入り焼きそばの元祖がどこの店かということよりも、異なる発祥のルーツを持つ釜彦食堂の「スープ入焼きそば」と、こばや食堂の「スープ入り焼きそば」の味の違いを楽しんでみてはいかがでしょうか。
こばや食堂「スープ入り焼きそば」
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